片手打ちバックハンド導入

片手打ちバックハンドを導入するには (両手打ちバックハンドも関連する)

個人的に思う片手打ちバックハンドの導入練習です。

片手打ちバックハンドを教わる際にポイントとして言われるのは、例えば「打点の位置は体のだいぶ前」「予めインパクトの手首の形を作りそれを保つようにボールに当てていく」「横向きをキープする」「体が開かないようにラケットを振る反対側の手は後方に残す」とかでしょうか? ただ、今思えば、これらの殆どが「打点の形を作るための説明である」気がしているのです。

これらを踏まえた片手打ちバックハンドの打点の形というとこんな感じじゃないでしょうか?

典型的な片手打ちバックハンドのインパクトの形の例

典型的な片手打ちバックハンドのインパクトの形1
体の横向きをキープし、腕を伸ばして打点位置を体よりもだいぶ前に取り、体が開かないように左手を後方に残した形です。

でも、この状態でラケットにボールが当たっていると仮定し、そのままボールが飛んでいきそうに見えるでしょうか?

腕を伸ばすことで体から腕とラケットが離れていってしまっており、せっかくスイングで得られたラケットスピードはここでは遅くなっているでしょうし、インパクトでラケットにボールが触れている0.004秒の間にもラケットは10cm以上(120km/hで約13cm)進みますからラケットがここから更にボールを打ち出す方向、角度に力強く進んでいけそうな気が全くしません。

実際に代表的なプロ選手の片手打ちバックハンドの打ち方を見てもこういった横向きのまま腕の伸ばしたようなインパクトを取っている選手は居ません。もう少し体を上手く使って打つ工夫をしていると思います。

横向きをキープしたまま腕の伸ばしたようなインパクトはリターンやストレートの短い距離にコントロール性を重視して打つのには使えても、通常のストロークを打ち合うのには使えないでしょう。ラケットスピードがないということはシンプルに飛ばない、回転がかけられないということです。打点の位置が体から離れるほどラケットスピードは落ちていくし、打点の位置が目から遠くなる分当たりにくくもなってしまいます。

片手打ちバックハンドでもラケットとボールが接触する位置はもっと体に近い方がいい

インパクトの間にもラケットが10cm以上進んでいることを考えても、ラケットとボールが最初に接触する位置は “ラケットが十分な速度を持っており、そこから前に力強く進もうとしている範囲” である『もっと体 (具体的には体の中心や重心位置に近い “腰” 部分) に近い位置が適当だ』と思っています。

上の写真のフェデラー選手のグリップがある位置、右足の前辺りでボールに接触し、そこから10cm以上ボールを押していった後にボールが離れると考えれば、ボールが飛ぶイメージは湧くのではないでしょうか。

片手打ちバックハンドでラケットとボールが最初に接触する位置はもっと体に近い

片手打ちバックハンドでラケットとボールが最初に接触する位置はもっと体に近い

念のため言うと、この打点の位置を『形』として考えること自体にあまり意味がないし、誤解の元だと思っています。

テイバックからフォロスルーまでスイングは止まりませんし、ラケットの運動エネルギーをボールに伝えると言ってもラケットがボールに触れた時点でスイングスピードが落ちる訳でもラケットが止まる訳でもありません。体の自然な機能を使ってラケットをスイングしている中のそこで止まる訳でもない1瞬の形を練習で作る意味はあまりないでしょう。あくまでこの辺で打つのですよというイメージ的な目安に過ぎません。止まることなく動くラケットスイングの中で教わった形を作ろうとする「操作」は不自然なだけですから。

上の図もインパクトの位置を示しているだけでこの形を作りなさいという事ではありません。

ラケットに働く慣性の力を利用してスイングを安定させる

繰り返しになりますが物体であるラケットには “慣性の力” が働きます。止まった物体は止まり続けようとするし、動いている物体はその直進運動を続けようとします。

また、円運動を行う物体には “遠心力” がかかります。遠心力とは回転する物体を中心点から外側に引っ張る力のことですが、物理的には遠心力という力は存在せず、慣性の力で直進しようとする物体が引っ張られることで常に進行方向を曲げられる、その手前に引張る力に対応して、反対側の外側に引っ張る力が感じられるためそれを”遠心力” と呼んでいるようです。つまり慣性の力が形を変えて感じられるものという感じでしょうか。

円周運動と遠心力 内側に引く力とそれに対する外側に引かれる力

遠心力でボールは飛ばない

さて、スポーツの世界ではよく「遠心力でボールを飛ばす」といった表現がされますが、ボールを飛ばす要因は運動エネルギーである「1/2 x ラケット重量 x ラケットスピード ^2 (2乗)」「ラケットとボールの当たり方で運動エネルギーがどう伝わるか」です。

ラケットはボールを飛ばす方向、角度にまっすぐ当てていくのが最も効率よくボールを飛ばせる訳で、ボールを飛ばす方向と関係ない、円運動の外側にラケットを引っ張る力がボールを飛ばすのに有効な訳はないと思います。(ハンマー投げがああいう投げ方をするのは、直接的に投てき方向にハンマーが投げていけないからですね。)

ボールを飛ばすスイング方向と遠心力の向き

円運動する物体が安定した円軌道を描くのは遠心力が関係する

ただ、紐をつかたオモリをグルグルと回した場合など、円運動する物体が安定した円周軌道を描き、重力によって落ちてしまわないのは遠心力(外側に引っ張る力)が関係しています。つまり、円運動の軌道を安定する要素として遠心力があるということです。

また、回転運動でラケットをスイングするなら、遠心力を感じられるのは「ラケットを握りしめていない、手や腕の操作でラケットをボールにぶつけようとしていない」状態であり、最近の言い方で言えば “脱力”、従来からの言い方で言えば “リラックス” した状態である必要があります。

リラックした状態でラケットを振り遠心力を感じる練習

ラケットに働く遠心力を感じながら、ラケットが慣性の力で前に進もうとする動きを邪魔せず、且つラケットを加速させていくということを考えるには、ラケットを強く握らず、ラケットを操作するという要素を排除していく必要があります。

テニスをやっている人でも自分がどの位の強さでラケットを握っているかはわかりづらいものですし、”脱力ってどうやってやればいいの?” と言った質問をされる方もいますが、遠心力を感じながらスイングする感覚を理解する方法として以下のような方法があります。

まず、中指、薬指、親指で輪を作るようにしてラケットを引っ掛けて持ちます。これで手や腕でラケットを操作して動かすことができなくなります。

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この状態で、胸位の高さで体の周囲を左右にラケットを振ってみます。速度を持って左右にラケットを振っている間はラケットに遠心力がかかるので、スイング軌道もぐらつくことなく安定しています。

片手バックハンド導入 リラックスしてスイングできる感覚を学ぶ

これはラケットを強く握っていないからできるものであり、“しっかりとラケットを握り意図的にボールに当てようと操作した” 場合とは全く異なるものだと思います。インパクト面に力は入るかもしれませんが人の操作で動かしたラケットのスイング軌道が毎回安定するはずがありませんし、力を使ってラケットを加速させるには限界もあるでしょう。何より疲れてしまいます。

ラケットの重量は300g程ですがこれは文庫本2冊程度の重さ、子供でも手に持って扱える重さです。バットのように重くはないので、腕の力に頼らなくても人の持つ体の自然な機能を用いることで十分な加速を得ることができます。むしろ毎回安定的なスイング軌道で、疲れにくく、十分なラケットスピードを得るにはそういった体の使い方の方が向いているということです。

特別なことでも何でもなく、テニスだからテニス用の体の使い方という訳でもありません。バックハンドだけでなく、フォアハンドもサーブもラケットをスイングするものは同様です。理屈さえ分かれば誰でもできるようになると思います。

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