片手打ちバックハンドでスピンを打つ 前編

片手打ちバックハンドでスピンを打つのは難しい?

片手打ちバックハンド自体習得が難しいと言われますが、トップスピンをうまく打つとなると更に難しいことだと感じられるようです。

断言していいと思いますが、よく聞く“トップスピンをかけるコツ”をそのまま参考にしようとしても片手打ちバックハンドで満足なスピンは打ません。一般的に言われる“フォアハンドでスピンをかける方法との考え方の違い”を理解する必要があるからです。

最初に結論的な事を言うなら、スピンをかける方法ではなく「片手打ちバックハンドのスイングをマスターしている人はスピン量も調整して打てるようになっている」ということあり、同時に「昔から言われる片手打ちバックハンドの打ち方は、研究の進んだ現代的なテニスにおける”片手打ちバックハンドのスイング”とは異なる」ということが上げられます。

フォアハンドが「現代的なフォアハンド (modern forehand)」と言われる”スイング軌道ではなくスイングスピードの速さを利用してスピードと回転量があるボールを打てるよう進化して”きている中、片手打ちバックハンドも「現代的なフォアハンド」と同じ理屈でスピードと回転量を持つボールが打てると思います。

私自身、“一般に言われる片手打ちバックハンドを打つ方法”では全く上達しなかったので“より簡単で皆ができる”ために理屈面から“現代的な片手打ちバックハンド”を考えています。

ボールに回転がかかるのは物理現象

ボールに回転がかかるのは物理現象です。ボールの片方の端に他より偏って力が加わればボールはその方向に回転をはじめ、空中を飛んでいく中で周囲の空気の流れに違いが生まれることでボールは曲がります。

テニスで言われる様々な“回転をかける方法”はそれを実現するための手法に過ぎず、その方法は端的に言えば何でも構いません。「テニスは特別なスポーツで難しく教わる通りにやらないとうまくできない。この打ち方で打たないとスピンはかからない」と考えるのは、物理現象である本質から考える機会がないということです。

ボールが飛び、回転がかかるのはスイングによって速度を得たラケットが持つ運動エネルギーがボールとの接触によりその一部がボールに伝わるからです。ラケットの運動エネルギーの大きさは「1/2 x ラケット重量 x ラケットスピード ^2 (2乗)」で計算され、ラケットは1種類なので単純には “ラケットスピードが速くなれば運動エネルギーは大きく”できます。

また、ボールに運動エネルギーが伝わるには必ず”接触”が必要で伝わるのもその一部に過ぎないので運動エネルギーの伝達ロスを小さくするために「正確な当たり方」が必要です。

ラケットでボールを打つ際、ボールの打ち出し角度の真後ろから90度の角度でラケット面を当てるのが最も正確に捉えれると言われており、当然、ボールに伝わる運動エネルギーのロスを小さくできます。ズレても5~6度の範囲に抑えるべきだと言われているそうです。

テニス、ラケットはボールの打出し角度に対し真後ろから90度で当てる

ラケットをスイングする目的は「ボールを前に飛ばすため」ですから打ち出し角度とスイング角度がズレるほど当たりにくくなるし、運動エネルギーの伝達ロスが増えてボールも飛ばなくなるのはわかりやすい道理です。

テニス ストローク ラケット面を振り上げる

フォアハンドでトップスピンをかける方法としてのワイパースイング

フォアハンドでは、肩や肘の関節を内側に巻き込むようにするいわゆる “ワイパー動作” でもスピンをかけることができます。これもボールの上側に偏って力を加える方法のひとつです。

テニス フォアハンド ワイパースイング

逆に片手打ちバックハンドでは、腕の関節を体の外向き(外旋、回外で)に回すのは内側に回すほど簡単ではありません。

片手打ちバックハンドでラケットとボールが最初に接触する位置はもっと体に近い

また、片手打ちバックハンドを学ぼうと色々見聞きしていると、スピンをかけるコツとして“インパクト前後でスピネーションを行い、バイバイと手を振るような動作でラケットヘッドを持ち上げてスピンをかけろ” と言われたりもします。

テニス 片手打ちバックハンド スピネーションでスピンをかける

これもボールの上側に偏って力を加える方法のひとつでしょうが、普段のストロークで使うような方法でもなくトリックショットのような類です。雑誌に載っているからといって参考にはしづらいですね。

肘を巻き込むようなワイパースイングはフォアハンドでかつスイングスピードが遅いからこそできる

フォアハンドで打つ肘を内側に巻き込むような極端なワイパースイングは“体の正面でボールとラケット、腕の動きが全て目で確認しながら打てるからラケットをボールに当てられる”という要素が大きいです。

また、“ボールの打ち出し角度に対してスイング角度が極端にズレた擦り上げるような打ち方でもボールにラケットを当てられるのはスイングスピードがそこまで速くないから”という面もあります。

テニス ストローク ラケット面を振り上げる

「自分はワイパースイングメインでスピンを打っているけどスイングスピードは速いよ」という方も居るでしょうが、極端なワイパースイングでストロークを打つ男子プロ選手は居ないしラケットスピードはワイパースイングで打たない分もっと速いという点があります。『スイングスピードが速い = ラケットから伝わる運動エネルギーが大きい』『スイング軌道がボールの打ち出し角度・方向とズレない = ボールに当たりやすくエネルギーが伝わりやすい』のは前述した通りです。

「ナダル選手はラケットを振り上げている」と思う方も居るでしょうが、ナダル選手もスイング軌道はあくまで他選手と同様に”ボールを打ちだす角度・方向”に向けて”です。もとも体の回転軸を後ろに傾けてスイング軌道を上げるスタイル(前側の足を上げている)なのと、インパクト前後でラケットを引き上げる打ち方は基本のスイングがあった上の応用です。

基準となるスイング軌道はボールの打ち出し角度と合っているのが分かると思います。

現代的なフォアハンド(modern forehand)について

昔は多く見られた極端なワイパースイングで打つプロ選手が見慣れなくなったのは、テニスの研究が進み、スイングスピードを安定的に効率よく上げる方が結果的にボールスピードの上昇及び回転量の上昇に繋がる (運動エネルギーが増大する。安定してボールを捉えることで伝達ロスも小さくできる)と分かってきたためだと思います。また、ボールの打ち出し角度・方向に向けてラケットを振る方が体の回転軸に沿ってラケットを動かせるため、体の機能・仕組みに無理なく、ラケットに働く物理的な力を活かして安定的に速く振ることができます。

ワイパースイング風のスイングを使う方を見れば回転はかかっているように見えてその実ボールスピードは遅いのが分かります。これは昔のプロ選手も同様でした。クレイコートで延々高い弾道のラリーを打ち続けるのにはいいのでしょうが飛ばない分一生懸命ラケットを振らないといけないし体力的にも不利です。回転に多くのエネルギーを割り振る以上に、当たりが薄いことによる伝達ロスの増大、ボールの打ち出し角度・方向と大きく角度がズレたスイングによりラケットスピードが上がらないことがあります。

片手打ちバックハンドの優位性は“振りきりの良さ”、つまり“スイングスピードの速さ”ですし、腕関節の曲がりやすさを使ってラケットヘッドを引き上げるようなフォアハンドにおけるスピンのかけ方はもともとマッチする打ち方でもないのです。

また、最初に書いたように「現代的なフォアハンド」と呼ばれる男子プロ選手極端なワイパースイングを使ってストロークを打たなくなっている現状から考えても“フォア・バック問わず、そういった打ち方自体が効率的とは言えなくなっている”状況だと思います。

ここでは片手打ちバックハンドについて書いていますが、”現代的なフォアハンド”なら安定的に無理なくスイングスピードが上がり、回転もかかり、正確にボールも捉えられる条件が揃います。誰でもできるのなら初心者の段階からそれらを前提にすべきです。

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