片手打ちバックハンドでスピンを打つ 中編

実際に片手打ちバックハンドでトップスピンをかけるには

コツの類を知りたい方には恐縮ですが、考え方としては「現代的なフォアハンドを構成する理屈を理解し、それと同じことを片手打ちバックハンドでもできるようにすればいい」と思っています。

前編で「フォアハンドで言われるトップスピンをかけるコツは参考にできない」と書きましたが、現代的なフォアハンド(modern forehand)とそれらではボールを打つことに対する考え方から異なるからです。

テクニックでスピンをかける方法を身に着けるのではなく、”現代的なフォアハンドのスイング”と同様の”片手打ちバックハンドのスイング”の完成がそのまましっかり安定的にボールも打てるし、スピンもしっかりかけて打つことができる方法ということです。

テニスでは“昔から言われる片手打ちバックハンドの打ち方 (教え方・教えるための情報)”がありますが、これに対する“現代的な片手打ちバックハンド”と言えるものを考えます。

男子プロ選手が“現代的なフォアハンド”でボールを打つのは技術が高いからではありません。“それが、人が誰もが持っている体の機能や仕組みを使い、安定的にラケットを加速させるスイングができる方法であるから”です。ラケットスピードも上げやすく、スイング軌道も安定し、ボールにも当たりやすい、疲れにくく怪我もしにくい。そういうフォアハンドが誰でもできるならやるべきじゃないでしょうか?

それと同じことはバックハンドでも言えるということです。

片手打ちバックハンドは難しいと言われる理由

「片手打ちバックハンドは習得が難しい」というのは世間一般の共通認識で以前は私もそう考えていましたでも、色々と考えてみる中で“片手打ちバックハンドが難しいのは単に技術的に難しいからではない”という考えに変ってきています。

まず、テニスを教わることに関して色々と教わってもなんだかんだ自分で工夫して打てるようになるしかない」という現実があります。

スクールに通えばコーチに打ち方を教わりますが打てるようになるまでつきっきりで教えてくれるということはないし、教えてもらっても簡単に打てるようになったりもしません。部活で練習する際も同様でしょう。両手打ちですら様々“コツ”の類を聞いてもある程度打てるようになるには時間がかかります。且つ、その人が打てるようになったのは“コツ”のおかげではなく“自分で何となく打てるようになっている”ものです。

分かりづらいかもしれませんが「両手打ちバックハンドも片手打ちバックハンドも (加えて言えばフォアもサーブも) マスターするために提供されるべきだろう情報が不足し、教え方も理屈を省いた手法の説明ばかりになっているから習ってもできるようにならず、結局自分で工夫するしかないのだろう」と言っています。

「両手打ちバックハンドは非利き手 (例えば左手)のフォアハンドを打つ要領だ」と言ったりしますが、それまでの人生で“逆手で何かを打つという経験値”が多い人は殆ど居ないので野球のバットなどより体感的にイメージしやすい両手で握ってラケットを振る方が自分自身で習得しやすいのは当然だと思います。

両手打ちバックハンドテニス 片手打ちバックハンド 初期練習1

自分でなんとなく打てるようになるしかないことから派生するのが「片手打ちバックハンドはきちんと打てるようになっている人は本当に少ない。(中途半端な状態の人が多く常に改善を考えている状態) とりあえずでも打てているのは両手打ちの方が多くなる。結果、周りに参考にできるは両手打ちばかり」という現状だと思います。

世間一般の認識は「片手打ちバックハンドは習得が難しく、両手打ちバックハンドの方がより強いボールが打てる。だからわざわざ片手打ちバックハンドを練習しようとする意味は全くない」といったものだと思いますが、それは “ボールが飛び回転がかかる理屈。体の機能や仕組みをうまく使い安定的にボールを飛ばすこと” を考えたことがないからだと思います。『片手打ちバックハンドも両手打ちバックハンドもボールが飛ぶ理屈は同じ、世間で言われる打ち方の差ほど両者に違いはない』と考えているからです。

現代的なフォアハンドの理屈を応用して片手打ちバックハンドの打ち方を考えると書きましたがラケットという道具をスイングしボールが飛び回転がかかる理屈にショットの違いは関係ないはずです。

目指すのは「現代的な片手打ちバックハンド」

片手打ちバックハンドを教わる際に言われることは「体は最後まで横向きをキープ、打点はできるだけ前に取る、体が回転しないようにスイングに合わせて非利き手を後方に伸ばして両腕でバランスをとる、ラケットを持つ腕を前に伸ばしていくようにボールを押していく」といったものでしょうか?

でも、初心者向けの最初のレッスンならともかく、“打点の位置にラケットをセットし、腕を前方に伸ばすようにスイングをしても、しっかりボールは飛ばせず、思った方向にまっすぐ飛ばすことも難しい” のは片手打ちバックハンドを習った方なら分かると思います。

テニス 片手打ちバックハンド 初期練習1

テニス 片手打ちバックハンド 初期練習2

ボールを飛ばし回転をかけるのはラケットから伝わる運動エネルギー

ボールが飛び、回転がかかる理由は、スイングによりラケットが速度を持ち、それによって得た“運動エネルギー全体の一部”が接触によってボールに伝わるからです。

ラケットの持つ運動エネルギーの大きさは「1/2 x ラケット重量 xラケットスピード ^2 (2乗)」で計算され、ラケットは1つなので単純にはラケットスピードが速くなるほど(2乗の割合で)運動エネルギーは増えてきます。

また、ラケットの運動エネルギーの全てがボールに伝わる訳ではありません。

ラケットとボールは固定されておらずエネルギーが伝わるには”接触”です。伝わるのは全体の一部でラケット(ガット)とボールの当たり方で伝わり方には多くのロスが生まれます。(ラケットやガットのしなる・歪む・たわむも “エネルギーの伝達に限れば” ロスになる要素です。)

スピンをかけようとボールの打ち出し角度とラケットのスイング角度の差が大きくなれば当然”ラケットとボールが正確に当たるのが難しく”なるし、かすれた当たりなら”ラケットからボールに伝わる運動エネルギーも小さく”なります。

ボールの打ち出し角度・方向に対してラケットを振り上げる打ち方は「正確にも当たらない」し「伝わる運動エネルギーもロスが大きい」ため効率的ではありません。

テニス ストローク ラケット面を振り上げる

ボールの打ち出し角度・方向に対してラケット面は真後ろから90度の角度で当たるのが最も正確に当てられ、効率よく運動エネルギーも伝えられます。ズレても5~6度の間に収めるべきと言われているようです。

テニス、ラケットはボールの打出し角度に対し真後ろから90度で当てる

このままでは回転がかからずフラット気味のボールになりますが、まず、「ベースライン中央、地上から80cmの打点からネット中央の2倍の高さ(約1.8m)を通るボールの軌道に必要な打ち出し角度は水平+約5度である」という事実があります。水平+5度で打ち出すだけでネットの2倍の高さを通ってしまうということです。

ベースラインからネットの2倍の高さを通過させるための打出し角度

よく“インパクトでラケットは地面と垂直”と言われたりしますが正確にはこの“打ち出し角度に対して垂直”です。水平+5度に打ち出すならラケット面も水平+5度ということです。

ボールに回転がかかるのは物理現象なので、どんな方法であれ「ボールの上側の端に他の部位よりも偏って力が加われば、ボールは飛行中の空気の流れの差により前向きに回転を始める」という理屈です。

「トップスピンをかけるにはラケットはボールの下から上に振れ」と言われますが、それではボールとラケット面が接触するのは1点だけになり当然ながら正確に当たりづらいです。

図:よく見るスイング方向のイメージ図。これには『ボールのどの位下から上へなのかというスイングの角度』は示されていない。また、ボールは立体なのに平面図で当たり方を説明するのはとても曖昧。

テニス スイング方向を示す図テニス 下から上にラケットを振るといっても角度は様々

図:ボールを飛ばすためにボールの打ち出し角度・方向に向けてラケットをスイングする中で、インパクトにおいてボールの上側の端に偏って力が伝われば回転は発生する。

テニス ボールの上側に偏って力を加えてスピンをかけるテニス ボールの打ち出し角度・方向にラケットをスイング

スイングによってボールを飛ばすため、男子プロ選手はボールを打ち出す角度・方向に向かってラケットをスイングしていきます。そして、ボールを飛ばすためのスイング軌道は維持したままラケットヘッド側を引き起こすことでボールの上側により強くラケットからの力(運動エネルギー)を伝えているのが『現代的なフォアハンド』の考え方だと思っています。

フェデラー選手のフォアハンド

プロ選手はスイングスピードが速いのでラケットをボールの上に向かってスイングするような打ち方をしなくても十分なスピン量を得られます。

また、本来、スイングする目的はボールを飛ばすためなので、ボールを飛ばし回転をかける要素であるスイングスピードを落としてまで、ラケットを振り上げてスピンをかけようとする打ち方が効率的なはずもありません。

物体であるラケットは慣性の法則の影響を受ける

物体であるラケットには慣性の法則が働きます。

テイクバックで停止状態にあるラケットは手や腕に引かれグリップ側から動き始めますが、ヘッド側はその場に留まろうとするので、手に引かれるグリップ側を留まろうとするヘッド側は反対方向に引っ張り続けます。

テニス グリップ側から手に引かれヘッド側は真後ろから追従

ただし、引かれる力の方が強く、スイング方向に加速を始めたヘッド側は、スイングによる回転運動とグリップ側よりも体から遠い位置にあることで、(回転運動の外側にある物体の方が速度は速くなるので) 手や腕の動き、体の回転よりも速度が速くなり、体を追い越して慣性の法則により前に直進していこうとします。

ただし、手に持たれたラケットは腕の長さ以上には前に進めません。スイングで得られた加速度、およびラケットスピード自体も腕や体を追い越して以降は急激に低下します。結果、ラケットは速度を落としながら腕と共に非利き手側へのフォロースルーを迎えます。

このラケットヘッド側が慣性の法則で前に進んでいこうとする力は体を追い越して以降も腕を前向きに引っ張ります。逆に腕はその力に対応する(釣り合う)ためにラケットを体の方に引っ張ります。スイングに伴う回転運動もあり、肩・肘・手首の関節を曲げていくことでこのラケットに引かれる力に自然と対応します。

上で「プロ選手はボールを飛ばすためにボールの打ち出し方向に向けてスイングする中でラケットヘッドを引き起こしてラケットスピードを保ったままスピンをかけている」と書きましたが、腕や手の操作で意図的にラケットヘッド側を引き起こしている訳ではありません。

スピンをかけるコツとしてプロネーションでスピンをかけろと言われたりしますが、ボールを打ち合っている中で毎回毎回意識してラケットを引き上げる操作をするのが妥当なはずがないです。

このスイング中にラケットヘッド側が引き上げるのは「体を追い越して以降も慣性の法則で前進しようとするラケットに腕が引っ張られ、回転運動に伴う遠心力もある。人は腕・肘・手首の関節を自然と曲げていき、それらの引っ張る力に対応しようする。結果、スイング軌道は非利き手方向に曲がっていき(円運動)、その中でラケットヘッドも上に持ち上げる」というのが基本となる部分だと思います。

テニス ストローク プロネーションでラケットヘッドを引上げる

※遠心力 – 遠心力は中心軸から”回転の外側”に物体を引っ張るよう力がかかります。

ボールを飛ばすスイング方向と遠心力の向き

「遠心力でボールを飛ばす」と言われたりしますが、遠心力が手やラケットを引っ張る方向とラケットが進む方向(ボールを打ち出す方向)は方向が90度近く異なります。回転により遠心力がボールの打ち出し方向と同じ角度になっている頃にはボールはラケットから離れてています。

ラケットをボールに当てる、ラケットをボールにぶつけるという指導

テニスでは「ラケットをボールに当てる」「ラケットをボールぶつける」意識を持たせる指導がされますが、体の機能や仕組みを使ってラケットが自然と加速し前進していこうとするのを補助できれば、ラケットスピードも上がり、スイング軌道も自然と安定します。むしろ、ラケットをボールに当てようとする意識、ボールに回転をかけようとする意識がスイング軌道を乱し、スイングスピードも上がらず、当たりも悪くします。

個人的にこれらのことが全て含まれているのが、男子プロ選手達の「現代的なフォアハンド (Modern Forehand)」なのだろうと思っています。

インパクトの0.004秒の間にもボールとラケットは接触したまま10cm以上も前に動いているということ

ボールとラケットが接触するインパクトの時間は0.003秒~0.005秒と言われます。仮に一般の人でも実現可能な120km/hでスイングするなら、インパクト時間の0.004秒の間にボールとラケットは接触したまま13cmも前進することになります。

テニス インパクトの0.004秒の間にラケットは10cm以上前進する

テニスでは『打点』と空中の一点でボールとラケットが接触するような説明が一般的ですが『その “空中の一点である打点” は、この “13cmラケットが動く幅” の中でどの部分にあたるのですか?』という疑問が起こります。

厚いグリップで打つ際、打点の位置は体の前方に離れていきますが、極端に厚いグリップで打つ方が、腕が前方に伸びてしまうほどの位置に打点を設定するなら『そこから13cmも前にラケットを動かせますか?』『体から離れる程、加速度・ラケットスピードが落ちてしまうということを理解していますか?』と言えます。

テニス 厚いグリップで打つフォアハンド

これらを片手打ちバックハンドに応用する

男子プロテニス選手が打つ『現代的なフォアハンド』片手打ちバックハンドに応用することを考えます。

基本となるのは以下の事柄です

1. スイングする目的はボールを飛ばし、回転をかけるため

2. ボールスピード・回転量に関係するのはラケットスピードと当たり方 (すごくシンプル)

3.ラケットは自然と加速し、安定的なスイング軌道を描く

4.加速したラケットは体を追い越した後に加速度、ラケットスピード共に低下する

5.インパクトの間にもラケットは10cm以上前進している

このことから言えることは「テイクバックの位置からラケットを十分加速させ、ラケットが体を追い越す “加速度が残っており、ラケットスピードが速い範囲内” でラケットとボールを接触させるべきだ」ということです。

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