安定したスイング軌道

ラケットでボールを飛ばすということ (おさらい)

ラケットでボールが飛ぶ理屈 でも書いたように人がラケットを振る理由の多くを占めるのは “ラケットを振ることでボールを飛ばすための運動エネルギーを得る” ためです。ボールにラケットを当てて思った方向に飛ばすことは距離を飛ばす必要がないならボレーのように止めたラケットでも行えます。つまり、距離に違いはあってもボールを相手コートまで飛ばせるだけでの運動エネルギーを得るにはラケットをスイングしないといけません。

ラケットの運動エネルギーは “1/2 x ラケット重量 x ラケットスピード^2 (2乗)” で計算され、手に持つラケットは1種類なので、スイングスピードが速くなる程、ボールに伝えられる運動エネルギーは大きくなります。

スイングスピードは “体を使ってラケットに運動エネルギーを与えること”で生じるので、多くの人は“筋力”“体格”“運動能力”がその要因だと考えますが、プロを目指すような競技者はともかく一般のレベルであればこれらはさほど重要ではないと思います。(ボールの速度を上げるより怪我防止に使った方がいいです。)

重要な事は、まず、“ボールに正確にラケットを当てられているか” で、毎回正しくボールを捉えることができないとラケットからボールに伝わる運動エネルギーに大きなロスが発生しますし、思ったコースに思った球威、回転量でボールを飛ばすこと自体ができません。

ラケットスイングは正しい体の使い方ができていることが前提となる

また、もうひとつの重要な事は“正しく体が使えているか” です。

100kgの重さを持ち上げるには体格や筋力が必要でしょうが50kgならそれなりの人が持ち上げられると思います。ラケットの重さは300g、ボールの重さは56~59.4gです。飛んで来るボールをラケットで打つと言ってもボールを打つ際に何十kgという重さが腕にかかる訳ではありません。ラケットの中心部、ボールが一番飛びやすい部分で打てれば、体の細い小学生だって十分に強いボールを打つことができます。

そのためには “人が元々持っている体の機能を使って無駄なく安定的に力を伝えられること” が前提になります。元々持っているという点が重要で特別な能力ということではないということです。

スイングする際にラケットに働く力 でも書いたように、ラケットには慣性の法則が関係します。テイバックの停止状態にあるラケットはその場に留まろうとしますが、手に引かれグリップ側からボール方向に向かって行きます。加速を始めたラケットには“進行方向に直進し続けよう”とする慣性の力が働きます。

前述のように、ラケットスイングする目的は、「ラケットスピードを上げるため」です。「ラケットを使ってボールを押す」ためではありません。押すためならスイングせず体の前にラケットをセットすればいいでしょうがそれでは遠くまで飛ばすエネルギーをボールに伝えることができません。

つまり、体の機能や筋力は「ラケットを加速させるため」に用いるべきで、加速したラケットには慣性の力が働くので、人が軌道を操作する必要なく、スイング方向が合っているだけで、ボールに向かってまっすぐ進んでいきます。逆にボールを強く打とう、ラケットをボールに当てようという人に意思や操作がボールを正確に捉えられなくしてしまいます。

テニスで言われる「脱力」は「リラックス」ということ

最近のテニスでは「脱力」がキーワードのように言われますね。ただ、ピッチャーがボールを投げる際に腕に力を込めたりボールを強く握りしめたりしないですし、日常生活でも同様のことはいくらでもあります。脱力と言っているのは「自然な状態」ということで「力むな」と同じ位の意味です。握力が何kg以下で握らないとダメといった矯正ではないのです。

「脱力」を英語にすれば「relaxation (リラクゼーション)」、日本語で言う所の「名詞のリラックス」です。(forehand relaxationで検索してみてください。) 昔から言われる「リラックスしろ」という表現を言葉を置き換えて言っているだけです。

スイングする際にラケットに働く力 でも、ラケットを振る際、遠心力を感じると書きましたが、遠心力は直進しようとする慣性の力が、円の中心に引こうとする力によってその方向を曲げ続けられて円周軌道を描く際、中心に引こうとする力と逆向きの中心から外側に引こうとする均衡な力を感じる事象のことです。

ただ、ラケットを振る際に遠心力を感じるというのは、慣性の力が働いていることを体で感じられているということ、つまり、自然な状態(リラックスができている)ということです。

ラケットは手と5本の指でどのようにでも持てるので、手全体で握ってしまうとスイングに遠心力を感じることが難しくなりますし、ラケットをボールにぶつける、当てるという操作に直結しやすいです。また、どの位の強さで握ればいいのかという表現がしづらい点でもあります。たまに聞く「卵を握るように」といった表現は分かりづらいですよね。

脱力(リラックス)状態を体感する方法

ボールを打つこと以前に、ラケットにかかる遠心力を感じられる取り組み、脱力ができているかを実感できる取り組みとしては、中指、薬指、親指で輪をつくるようにし、その輪にラケットのグリップを通した状態で、体の周囲でラケットを振ってみる方法 が良いのかなと思っています。

中指、薬指、親指で輪をつくり、グリップを通した状態でラケットを持つ

動画: みんラボ フォアハンドのテイクバックからインパクトのラケットの動き

手や指でラケットを支えられないので、安定して軌道を作るにはラケットを加速させ、慣性の力(≒遠心力)に任せるしかありません。逆に、手や指で操作できない分、ラケットが描く軌道はブレなく安定しています。

これはフォアハンドだけでなく、バックハンドでも同様の事が言えます。

動画: 片手バックハンド導入 リラックスしてスイングできる感覚を学ぶ

この取組みに慣れてくれば、この3本の指で輪を作った状態のままフォアハンドでもバックハンドでも、サーブでも通常と変わらないように打つことができます。

このことからも「ラケットは腕や手の操作でボールに当てるのではない、加速させて運動エネルギーを増やし、慣性の力で生まれる安定した軌道を利用して正確にボールを捉えるのだ」ということが分かるかと思います。

スポンサーリンク

フォローする