遠心力でボールは飛ばない

スポーツで頻繁に使われる「遠心力を使う」という表現

スポーツでは、本当によく「遠心力を使う」といった表現が使われます。

野球のバッティング、遠心力

著名なプロ野球選手、ゴルフ選手、解説者の方がテレビで「遠心力を使ってボールを投げる」や「バットの遠心力でボールを飛ばす」と説明されるのを頻繁に見かけます。

あくまで想像なのですが、選手および元選手の方々は過去練習してきた中で指導される方が言われる「遠心力を使って」という表現を聞いて来ていて、自分自身でもボールを打ったり投げたりしている中で「遠心力」を感じてきているから、そういった表現を使い続けているのだと思っています。「遠心力」は身近で誰もがイメージしやすい言葉でもあります。

ボールを飛ばす要素は、重量、スピード、当たり方

物理的に言えばラケット、クラブ、バットでボールを飛ばす要因は、スイングによって道具(テニスで言えばラケット)が持つ運動エネルギーであり、それは「1/2 x ラケット重量 x ラケットスピード ^2 (2乗)」で計算されます。これに「ラケットとボールの当たり方によって運動エネルギーがどうボールに伝わるか」が関連します。

ボールを飛ばす方向、角度に向けてまっすぐ真後ろから90度の面でラケットを当てていくのが最も正確にボールに当てられ、効率よくボールを飛ばせるのは皆が納得感を持てると思います。

ボールを打ち出す方向、角度の真後ろから90度の面でラケットを当てる

遠心力は円の外側に引っ張る力で方向性が異なる

スイングは体の回転によって行われますが、ボールを飛ばす方向と関係ない、円運動の外側にラケットを引っ張る力がボールを飛ばすのに直接的に有効な訳はないと思います。(ハンマー投げがあのような投げ方をするのは、投てき方向に直接的にハンマーを投げれないからですね。)

ボールを飛ばすスイング方向と遠心力の向き

テニスではボールの打出し方向や角度にラケットを振っていけるわけで、それによりボールに力を伝える方がはるかに直接的です。

因みに「遠心力」という力は存在しない

また、物理的な話で言うと「遠心力」という力は存在しないそうです。

ひもを繋いだオモリをグルグル回しているような円周運動において物体は慣性の法則でまっすぐ直進しようとしますが、ひもに円の中心方向に引っ張られる形でその進む方向を常に曲げられてます。これにより物体は円周軌道を描くことになります。

円周運動と遠心力 内側に引く力とそれに対する外側に引かれる力

ひもは物体を円の中心方向に引っ張っていますが、引っ張る際、これとは逆向きの “外側に引っ張る力”が感じられるようになります。これは実際に紐を外側に引っ張っている訳ではなく、物体が直進しようとする力と中心に引っ張る力の組み合わせでそう感じるものですが、日常生活ではこれを「遠心力」と呼んでいるということです。

ハンマー投げのようにグルグルと体を回転させながら回転途中にラケットを放し、飛んでいくラケットをボールに命中させて飛ばすような競技(?)であれば遠心力でボールを飛ばしていることになるのかもしれませんが、実際にはラケットはボールを打ち出す方向、角度にラケット面を向けて接触させることでボールを飛ばします。

スポーツを教わる際、理屈を伴わないイメージ的、感覚的な表現が溢れてる

「遠心力でボールを飛ばす」と表現される方に悪気はなく、伝聞で聞いた表現を自分のものとして言っているだけだと思いますが多分に感覚的な表現だと言えます。それを聞いた人にそれを実践せよと言っても理屈も何もない中で”体感せよ”と言っているだけです。イメージ的には理解できてもどうすればいいのか分からないでしょう。

テニスでも、理屈と関係なくイメージ的な表現を用いて指導、説明されることはたくさんあります。例えば「体重移動で打ち負けないようにする」、「ラケットがしなってボールを飛ばす」「冬場はボールが飛ばないからテンションを落として飛ぶようにする」といったものです。

練習される側の想像力を高めるためにそういった表現を併用されるのはいいと思いますが、教わる側がまず知るべきは根拠のある理屈であり、フワフワとした言っている本人も具体的に説明できないイメージを “上達の唯一の頼り” にするのは妥当だとは思いません。

聞いた人がその場で再現できない説明は基本とは言えませんね。

必要な事はスイングスピードを上げること

ボールを飛ばすのも、ボールに回転をかけるのも、最も端的に効果があるのはラケットの運動エネルギーが2乗で増える “スイングスピードを上げる” ことです。

ただ、力を込めてラケットを振ろうとしても一定以上に速度は上がりませんし、筋肉の緊張や体全体のバランスが崩れることで安定したスイング軌道や正確なインパクトも損ないます。何より直ぐに疲れてしまいますし、怪我の元にもなります。

プロ選手のような150km/h近いストロークを打ち続けなければいけない訳ではないですから、まずはボールが飛ぶ理屈を考え、体の機能や使い方を学ぶことで、誰もが実現できるレベルの安定してしっかりとしたボールが打てる状態を目指すことだと思います。

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