ボールを飛ばすのは力ではない

ラケットでボールが飛ぶ理屈 で書いたように、ラケットを振ることで得られる運動エネルギーは “1/2 x ラケット重量 x ラケットスピード^2 (2乗)” で計算されます。

同じラケットを同じスピードで振れば同じだけのエネルギーが発生するので、Aさん、Bさんでこのエネルギー量が違うということはありません。

手に持っているラケットは1種類だけなので、今使っているラケットで発生される運動エネルギーを大きくするには スイングスピードを速くするしか ありません。

ただし、「スイングスピードを速くする方法は力を込めて振ることではない」ことに注意が必要です。力を込めて振れば多少は速くなるでしょうが、安定して楽により速いスイングスピードを出せる方法があるからです。

因みに現代のラケット重量は300gが平均と言われていますが、これは約20年前に登場したバボラのピュアドライブ人気製品となり、その仕様 (100インチ、300g、320mm) が黄金スペックと呼ばれラケット選びの基準となった事が影響しているだろうと思います。

300gを超えると重い、280gを超えると軽いのように言われるのに何の根拠はありません。ラケットが軽くなると打ち負けると言われたりしますが、ラケットの重量バランスを変えないようにラケット全長の中央あたりスロートとラケット面の接合部辺りに1枚1gの1円硬貨を20枚貼ったところでボールを飛ばすパワーが急増するはずはありません。20g軽くしても同様です。

ちなみに、ラケットの面積を半径が均一な真円として比べた場合、90インチのラケットと100インチのラケットではラケットフェイス周辺で1cmの違いしかありません。周囲が1cm大きくなったところでボールが急激に飛ぶようになるはずもありません。

ボールの飛びに影響を与えるラケットの要素は大きくはフレームの “硬さ” です。フレームが厚い程、ボールが当たった際にしならずパワーロスしないのでボールが飛びます。逆に薄いフレームだとしなってパワーロスするので飛びにくなります。ラケットのフェイスサイズが小さく重量が重いラケットはフレームが薄いことが多いので、「フェイスサイズが小さい = 飛ばない」という通説が広がっているものです。

話を戻しますが、ラケットの運動エネルギーを大きくするためには2乗で増えるスイングスピードを速くすることが手っ取り早いですが、同じ速度で振れるなら使うラケットの重量を重くすることでも大きくすることができます。前述の通り、ラケット交換ではなく重量だけ10g程度重くしても大きな差はなく、2週間も使えば慣れてしまう程だと思います。重さが振りにくいと感じるならラケット重量を軽くしてスイングスピードを上げる (これは感覚の問題で重量は慣れてしまうのでオススメしませんが)方法もあります。

さて、同じようなスイングスピードでラケットを振っているのに他の人よりもボールに速度がでないという場合があります。この場合考えられるのは “ボールの当たり方” です。

ラケットがボールに当たる事で伝わる運動エネルギーは、ボールへの当たり方により「ボールスピード」と「回転量」に反比例的に反映されます。ただ、100%をその両方に伝える事は難しいので必ずロスが発生します。このロスを小さくするために必要なことが「インパクトの正確性」です。

ただラケットは速く振るのではなく、継続的に安定的なスイングをすることでラケットの軌道を安定させ、ラケットとボールのインパクトが常に正確に行えるようにすることが大前提となってきます。

ただし、正確なインパクトというと「技術の問題」「技術が高くなれば精度があがる」と考えがちですが、実際には、技術以前のもっと手前に正確にボールを捉えるためのポイントがあります。テニスを教わる中ではその事に触れられないことが初心者の上達を遠回りなものにしていると感じています。