ボールは体重移動では打たない

ボールを打つ際は “体重移動をして打つ” という説明

この後、フォアハンドにおける体重移動という話 でも改めて説明していますが、初心者の方がテニスを教わる際には必ずと言っていいほど「ボールを打つ際は体重移動をして打つ」「体重移動をしないと相手のボールに打ち負けてしまう」といった説明を受けます。

体重移動という説明はテニスに限らず色々なスポーツで言われるので馴染みのある言葉ですが、少なくてもテニスに限って言えば、ボールを打つことと”体重移動”には指導される方々が言われるほどの意味はないと考えています。

何故、体重移動をして打つと言われるのか?

初心者の方がテニスを教わる際、“フォアハンドは横向きのスクエアスタンスでテイバックを取る” ように説明を受けます。

スクエアスタンスによる横向きのテイバックで腕を肩よりも前に置く

このテイバックからフォアハンド打つ打ち方は、昔、ラケットが木製だった30年程前から変わらず「テニスの基本」として続いているものだと思います。

コンチネンタルで打つフォアハンドは打点位置が体の横位

昔のラケットが木製だった頃はサーブを打つ際のような薄いグリップ(コンチネンタルグリップ)でフォアハンドを打っていたため“ボールを打つ打点は体の真横位だった”と想像します。

体の中心軸を前側の脚上に移動させながら体を回転させる

これは薄いグリップでボールを打つ際、ボールの打出し角度に対して自然とラケット面が向く腕の位置が体の横位だからです。今でも、ボレーやフォアハンドをスライスで打つ場合など、薄いグリップで打つ場合の打点位置は体に近くなります。(皆、殆ど気にしませんがサーブを打つ際の打点位置もグリップによって変わります。)

スピンをかけて打つためにグリップが厚くなり、打点位置も前に移動していく

ただ、ラケットの進化によりボールを打つ際にトップスピンをかけて打つようになるとコンチネンタルグリップよりも厚いグリップでボールを打つようになりました。

グリップを厚くしていくと、ボールの打出し角度に対して自然とラケット面の角度が作れる打点の位置が体よりも前に移動していき、結果、ボールに回転をかけるのが楽になるからです。(注: これは打点が前になる方がスイングスピードが上げやすい&ボールに力を伝えやすいということ。打点を前にすれば勝手に回転がかかるようになるわけではないです。) 

打点が前に移動すると当然、打点におけるラケットの位置が体から離れていくので、両足を平行に置いたテイバック時の状態のままでは腕の位置を打点の位置まで伸ばすことができませんし、インパクト後のフォロースルーも難しくなります。

結果、スイングに合わえて上半身をより回転させて、体をネット方向に向ける必要があります。体がネット方向を向けば、横向きの状態から“利き腕の肩の位置”がより前に移動するため、前に移動した打点の位置までラケットを動かすのが楽になります。

厚めのグリップで打つフォアハンド 1

体を回転させてネット方向を向けるためには「体の軸」を両足の中央から前後いずれかの脚の上に移動させないといけない

上の2つの打点位置の図でも分かるように、横向きのスクエアスタンスでフォアハンドを打つ際、体を回転させてネット方向に向けるためには、テイバックで両足の中間にあった”体の中心軸”を前側もしくは後ろ側のいずれの脚上に移動させる必要があります。

体の中心が両足の中央にあるテイバックの状態では”両方の足から支えられる形で股関節は動かせず上半身を回転させるだけ”になります。

体の中心軸が両足の中間にあると体が回せない

このため、体の中心軸を、前側の脚、もしくは後ろ側の脚の上に移動させることで、脚から頭までを1本の軸として回転させられるようになります。特に、膝から股関節にかけて回転できるようになるのは大きいです。

体の中心軸を前か後ろの脚上に移動させて打つと言ってもピンとこない方は、下の図のようも後ろ側の脚上に体の中心軸を移動させて打つのを見ればイメージが湧くのではないでしょうか? 自分が居る位置に対して思ったより深いボールが飛んで来た際、少し後ろに下がりながら打つような状況です。

後ろ側の脚上に体の中心軸を移動させて体を回転させる例 (深いボールを打つ際など)

テニス フォアハンド 後ろ側の脚上に体の中心軸を移して打つ

前側の脚上にせよ、後ろ側の脚上にせよ、横向きの状態で体を回転させる際、人は自然と体の中心軸を片方の脚上に寄せる工夫をしています。

この後ろ側の脚上に体の中心軸を寄せることを “守備的に打つ応用技術の一種” (体重を後ろにかけて打つ打ち方?) のように言ったりもしますが、そういう状況になれば本質的には誰でもやれることです。“自分が知識がないテニスという枠組みを通して説明され、ラケットでボールを打つという形で説明される” から何か特別なことに感じるだけです。

「体重移動」という表現

このように、横向きのスクエアスタンスでテイバックした状態からフォアハンドを打つ際、特にグリップが厚くなっていき打点位置がより前方に移動した場合は、体をネット方向に向けるために体を回転させる必要があり、そのためには体の中心軸を(この場合は)前側の脚上に移動させていくことになります。

私は、この事を「体重移動」と表現していると思っています。

また、テイバックでは後ろ側の脚に体重をかけておき、ボールを打つ際に前側の脚に体重を移動させると共に、後ろ側の脚で地面を強く蹴ることでボールに力を加えてたり、回転を強くしたりすることができるという指導もあるので、単に体の中央→前側の脚上ではなく、後ろ側の脚上→前側の脚上へ体の中心軸を動かしているということも加わっているはずです。

30年以上前から続いているこのフォアハンドの打ち方に関する説明です。体の中心軸を移動させないと体が回せずしっかりスイングもできないので、それを「言われるように”体重移動しているから”しっかりスイングできるのだ」と間違って実感してしまい、誰かからこう教わった人は、その後、他の人に教える際はそのままの内容を教えます。教える側も教わる側もそういうものだと思っているから皆疑問に思わないのです。

オープンスタンスで打つ際は見た目上の体重移動をしないということ

例えば、オープンスタンスでフォアハンドを打つ様子を見ると、スクエアスタンスの横向きのテイバックからフォアハンドを打つ際のような「体重移動」が起きません。

正面を向いた状態から上半身を撚るテイバック

加速したラケットは腕や体の位置を追い越す

これは、横向きのスクエアスタンスでフォアハンドを打つ際に必要となる「体をネット方向に向ける」という動作がオープンスタンスでは不要だからです。構えの段階から体はネット方向を向いているので体を捻ってテイクバックをしたらそれを戻すだけです。

ボールを打つ際に体重移動をして打たないとボールに打ち負ける、ボールに威力がでないと考えるならオープンスタンスで打つボールはスクエアスタンスの横向きのテイバックで打つよりも威力がないということにありますが、実際はその逆になることが殆どだと思います。

このように“ラケットをスイングするために体の回転と体の向き、体の中心軸との関係性”という点で見れば一目瞭然ですが、「ボールは体重移動をして打つものだ」と理解してしまうとオープンスタンスで自分が言う”体重移動”が起きないことに関して説明ができない ことになります。

実際の場では、皆、説明ができないからその点はあやふやにしていると思います。”スタンスが違うからそうなるんだ” みたいな話では説明になっていませんね。理屈を理解せずに上達に繋がるはずもありません。

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