ラケットの加速と打ち方の関係3

上半身を捻ってテイバックを取る打ち方はラケットを加速させやすく、加速させるのに無理がない

「スクエアスタンスによる横向きのテイバックを取ってから打つ打ち方」と「正面を向いた状態から上半身を捻ることでテイバックを取る打ち方 (現代的なフォアハンド)」の特性の違いを上げてきましたが、比較すれば後者の方が「ラケットを加速させやすく、加速したラケットは腕よりも速度が速くなる。速度が上回ったラケットは腕や体を位置的に追い抜く」という事象が起きやすいと言えるのは分かると思います。

正面を向いた状態から上半身を撚るテイバック振り始めに手首に角度(ラグ)がつく上半身を捻ってテイバックしたフォアハンド、インパクト付近

スイングによってラケットは腕よりも速度が速くなる

ボールを飛ばすためのラケットの運動エネルギーは「1/2 x ラケット重量 x ラケットスピード^2 (2乗)」です。この運動エネルギーはボールスピードとボールの回転量に反比例的に分配されますからボールスピードを上げるにも、ボールに回転をかけるにもラケットスピードが上げることが最も重要で、ラケットをスイングする目的の多くはラケットスピードを上げることです。

※ラケットをスイングするのはボールに当てるためと考えるのは適当でないと思います。ボールに伝わる運動エネルギーのロスを減らさないようラケットをボールに正確に当てるのは人による操作よりもラケットに働く慣性の力を活用した方がより安定するからです。

体の回転と加速したラケットが腕や体の位置を追い越すということ

繰り返しになりますが、私は「ボールをしっかりと打つためには、体の正面 (右肩から左肩の間+α) の範囲かつ肩よりも前に腕がある状態」を作ることが大事だと考えています。

腕をしっかり振るには体の正面 (右肩から左肩の間+α) の範囲かつ肩よりも前に腕があること

ラケットを持つ利き腕の手や腕がこの範囲の外側、つまり肩の位置から離れてしまったり、肩に近い、つまり肩のラインの延長線上に近くなってしまってはラケットを加速させるのに不利になってしまいます。

 ラケットを持つ利き腕が体から離れ肩に近い位置まで近づく

因みに、打点の位置にラケットをセットするよう説明する際、「打点の位置でラケットを押すのに力が入る、入らない」と言われますが、これは単なる説明上の例えと理解したいです。打点にセットして止めたラケットを腕でボールに押し付ける訳ではないですから。

スイング中の動いているラケットの1瞬、時間にして0.004秒以下に力が入るも入らないもありません。

ラケットをスイングする目的はラケットを加速させること、ボールに伝わる運動エネルギーの大きさを決めるのはラケットスピードですから、考えるべきは「人の体の構造から考えて、上の2つの図の内、どちらがラケットの速度が出やすい状況か」であり、答えは腕が肩の前にある上の方の図の状態だと思います。

スイングする目的であるラケットを加速させることを実現しやすい打ち方

まとめると「正面を向いた状態から上半身を捻ることでテイバックを取る打ち方 (現代的なフォアハンド)」の方が体に無理なくラケットを加速させやすい打ち方であると言えると考えています。

この打ち方は「現代的なフォアハンド」と言ったりしますが、20年程前に起こったラケットやガットの急激な進化により実現できるようになったものです。逆に言えば現代の道具を有効に使うのであればこちらの打ち方の方がより適当だとも言えます。

前述の通り、初心者からテニスを習って始めたような方はほぼ間違いなく昔ながらの「スクエアスタンスによる横向きのテイバックを取ってから打つ打ち方」で習います。女子プロテニス選手の多くもこの打ち方を用いています。

一方、この20年以上、男子プロテニスは日々新しい存在の登場に晒らされ進化を続けてきました。全員が200km/hを超えるサーブを打ち、全員がそれをリターンでき、全員がものすごい回転量のトップスピンを打ち合い、時間を奪い合う速いテニスをします。このため、殆どの男子選手が現代的なフォアハンドと言える「正面を向いた状態から上半身を捻ることでテイバックを取る打ち方」を用いています。

道具の進化も踏まえて考えればこういった違いが生じるのは当然でしょうし、女子No.1と言えるセリーナ・ウィリアムズ選手でも男子100位の選手にも勝てないと言われる、性別とは違う次元でテニスに差が生じていることにも繋がると思っています。

どちらか一択ではない。まずは理解すること。

一つ上げておくべきことは、マレー選手やジョコビッチ選手のように我々のようなスクエアスタンスによるテイバックから打つ打ち方がベースになっていて、これに現代的なフォアハンドの要素を加えている選手も居るということです。

マレー選手の練習風景

ジョコビッチ選手の練習風景

 

どこで違いが分かるのかというと、スクエアスタンスの横向きのテイバックを取った状態から打つこともあるのですが、仮にオープン系のスタンスでも、スクエアスタンスの横向きのテイバックから打つ際の特徴である “回転の中心軸が前側の脚上に移動することで、フォロースルーにかけて後ろ側の足が前側の足の方に寄っていく動作” だと思います。

フォアハンドのフォロースルー

両選手を見ても分かるように、0か1かで選べということではありません。

ボールの打ち方の話になると「こうしないといけない」と100%同じものを再現しようとする方が多いですが「形」の話ではなく「体の使い方」の話です。これを認識、理解することなく◯◯選手の打ち方を真似しようとしても思った効果はでないでしょう。

また、「正面を向いた状態から上半身を捻ることでテイバックを取る打ち方」の代表格はフェデラー選手などでしょうが、特殊な打ち方でも特別なセンスや体格がないとできない訳でもありません。理解しようとすれば初心者の方でも同じような体の使い方でボールを打てるということだと考えています。

スポンサーリンク