ラケットの加速とスピン、スイング軌道の関係性

「スイングする目的はボールを飛ばすこと」という大前提

ラケットをスイングする最大の目的は “ボールを飛ばすこと” です。

スイングによってラケットが得る運動エネルギーが接触することでボールに伝わり、伝わった運動エネルギーがボールスピードと回転量に反比例的に分配されます。ラケットの運動エネルギーがボールに伝わるには接触が必要なのでラケットとボールの当たり方が運動エネルギーの伝達に影響します。

『ボールを打ち出す角度・方向に対して真後ろから90度のラケット面でまっすぐ当てるのがもっとも正確にボールを捉えられラケットの運動エネルギーが伝えやすい』のは何となく分かると思います。

テニス、ラケットはボールの打出し角度に対し真後ろから90度で当てる

ただ、硬式テニスには“ボールを飛ばす”ことに“回転”という要素が加わます。現代ではストロークを打つ際に“トップスピンをかけること”はほぼ必須と言えます。

初心者の方がボールの打ち方を習う際には“最初からトップスピンをかけて打つように”教わるのでこの“ボールを打ち出す角度・方向に対してラケット面を90度で当てる”という点はほとんど説明されません。

私は本来、トップスピンを打つ実践の前に、1)体の機能と仕組み、2)ラケットをスイングするための体の使い方、3)ラケットに当たったボールが飛ぶという物理現象を理解した上で、まずは回転をかけない状態で打ち出し角度・方向に向けてラケット面をまっすぐ当てていくことを理解してもらうべきだと思っています。

ボールに回転がかかるのは物理的な現象です

初心者の方はトップスピンをかける方法として「ラケットをボールの下から上に向かって振っていく」という方法を教わります。

ただ、トップスピンの打ち方を学ぶ前にまず理解すべきは“ボールに回転がかかるのは物理的な現象だ”ということです。ボールが回転する発生要因は「ボールの一方の端に偏って力がかかること」で、これによりボールの周りの空気の流れに差が生じボールは曲がっていきます。

最初に教わる「ボールの下から上にラケットをスイングしていく」というのもボールに回転をかける方法の一つですが、この原則が満たされれば回転をかける方法はたくさんあるわけです。

ただ、最初に「ボールの下から上にラケット振ることでトップスピンをかける」と教わることが、その後、テニス自体が上達していった後もそれがトップスピンをかける方法だと認識に刷り込まれてしまうのです。

下から上にラケットを振る前提でよりトップスピンがかける方法を見つけようとします。方法た目的になってしまい、ボールに回転がかかるという物理現象自体に目を向ける機会がなくなってしまうということですね。

ボールの下から上にラケットをスイングしていくとは?

「ボールの下から上にラケットをスイングしていく」というスイングはこういうスイングです。

ボールの下から上にスイング

でも、最初に述べた「ボールを飛ばすためにボールの打ち出し角度・方向に対して真後ろから90度の面でボールを当てていく」という点から言えば、接触時のラケット面は打ち出し角度・方向を向いていたとしても “スイング軌道はボールの打ち出し角度・方向からはだいぶズレて” しまいます。

スピンを強くかけようとスイング角度をより上に振っていけばなおさら打ち出し角度・方向からはズレていってしまいますね。

このズレは “ラケットとボールが正確に当たるのを難しくし、ラケットからボールに伝わる運動エネルギーの少なくなる要因” になります。回転をかけようとラケットを上に振っていくとかすれた当たりになりやすいのはこのためです。

「スピンをかけるためにボールの下から上にスイングしていく」と教わる際に“ボールの打ち出し角度とスイング軌道の角度ををそれぞれどの位に取ればいいかは具体的には示してもらえない”と思います。自分で試行錯誤するしかなく曖昧でわかりづらいですね。

でも、皆がそういうものだと思ってやっているのが現状だと思います。

ラケットはボールの打ち出し角度・方向に向けて振っていくべき

では、ボールの打ち出し角度・方向に向けて真後ろから90度の面で当てるのが望ましいとして「ボールの下から上にスイングするのと同等以上にトップスピンをかける方法があるのか?」と聞かれれば「あります」と答えられます。

というか、男子トッププロがストロークを打っている様子を見れば我々が教わるような”ボールの下から上に向かってラケットをスイングしている”選手は居ません

ナダル選手は違うのか? と思うかもしれませんが、ナダル選手は他選手同様にボールの打ち出し角度・方向に向けてラケットをスイングし、インパクトの前後からラケットヘッド側を大きく引き上げられるようなスイングをしているだけです。下から上に振っているのとは違います。(加えてナダル選手は前側の足をやや浮かし体の軸を後ろに傾けることでスイング軌道を上げています。)

ポイントとなるは「ラケットの加速」と「ラケットヘッド側の引き起こし」です。

運動エネルギーを大きくするためスイングスピードを安定的に上げる

まず、ボールを飛ばし回転をかけるため“ラケットの持つ運動エネルギーを大きく”します。

ラケットの持つ運動エネルギーの大きさは「1/2 x ラケット重量 x ラケットスピード^2 (2乗)」ですから我々が行うべきことは“ラケットスピードを(安定的に)上げること”です。(ラケット重量は固定なので変えようがありません。)

繰り返しますが、ラケットの持つ運動エネルギーを小さいロスでボールに伝え飛ばすためには打ち出し角度・方向に向けてラケットをしっかり加速させながらスイングしていくことです。回転を考えなればまっすぐ真後ろから90度で当たるようにですね。

テニス、ラケットはボールの打出し角度に対し真後ろから90度で当てる

このラケットの加速に重要となるのが「太鼓をたたくような腕の使い方」です。

肘を立てた状態で腕を振るとこういう感じ。

バチで太鼓をたたくような腕の動作 (その1)

この動きをストロークのスイング同様、腕を寝かせた状態で行うとこういう感じです。

バチで太鼓をたたくような腕の動作 (その2)

この動きには”腕の外旋・内旋”、”腕の回外(スピネーション)・回内(プロネーション)”手首の動き等々、腕を速く振る要素が色々含まれています。

実際のスイングはテイクバックの停止位置からラケットを加速させていく訳ですが、腕の機能や仕組みに絞って見ればこの動きがラケット加速のきっかけになります。

ラケットが加速しボールの打ち出し角度・方向に向けてまっすぐラケットをスイングしていきます。

打ち出し角度・方向に向けてラケットをスイングする中で回転をかける

ボールの打ち出し角度・方向に向かって真後ろから90度の角度でラケット面を当てるだけでは伝わる力はボール全体で均一なためトップスピンがかかるような回転は発生しません。

テニス、ラケットはボールの打出し角度に対し真後ろから90度で当てる

ただ、人の腕の機能はよくできているもので、加速したラケットを体の横(後方)から体よりも前方(肩よりも前)に振っていくと、慣性の力で直進しようとするラケットに引かれ、腕の関節は自然と曲がりこれに対応しようとします。

加速したラケットに引っ張られ腕の関節は曲がってこれに対応しようとする

結果、ラケットは腕に体の中心方向に引かれ、直進しようとする進行方向を曲げられ、減速しながら非聞き手側の肩の方に巻き付いていきます。(この手に引かれる力とラケットが直進しようとする慣性の力の間で起きるのが手が中心に向かって引く力と同じ大きさで外側に引っ張る力である“遠心力”です。)

フォアハンドフォロースルー

関節が自然と曲がって対応してくのは、ラケットがボールに当たった瞬間、人が意図的にラケットを停止させない限り、速度を持ったラケットに引っ張られて関節を曲げていく方が体に無理がないためです。

この自然と腕の関節が曲がっていく動きの中にボールに回転をかける要素があります。

重要なことは「プレイヤーはただボールに向けてラケットを加速させスイングしているだけで意図的にラケットを操作している訳ではない」という点です。

スピンをかける動作を行うのではなく、体の機能に基づく動作の中で自然とスピンがかかること

ボールの打ち出し角度・方向に向けてラケットをまっすぐスイングしインパクト前後に腕の関節が自然と曲がっていきます。腕の関節が曲がることでラケットのヘッド側が自然と持ち上げってきます。ラケットをボールの下から上にスイングするのと同様、これもボールの上側に偏って力を加える要因になります。

ラケットを下から上に持ち上げるといった意図的な操作がないためラケットの速度や直進しようとする慣性の力を妨げることがなく、結果、加速したラケットが持つ運動エネルギーの大きさを最大限ボールに伝えることができます。

より速いスイングスピードを保ったままボールを捉えられる。運動エネルギーが大きいわけなのでボールスピードも上がるし、回転も増やせる。インパクト面もボールの打ち出し角度・方向に向かっているからボールも安定的に捉えられるというわけです。

だから、男子プロ選手は例外なくこういった打ち方をしています。

〇〇でも書いたように、ベースライン中央付近、地上から80cmの高さの打点からネット中央部の最も低い位置の2倍の高さを通過するストローク軌道を実現するための打ち出し角度は”水平 +4.943度”です。

ベースラインからネットの2倍の高さを通過させるための打出し角度

この角度よりも上向きにラケットをスイングすれば、ラケットとボールは正しく当てるのが難しくなるし、ラケットからボールへの運動エネルギー伝達にロスも生じます。

「ボールを飛ばすためにボールの打ち出し角度・方向に向かってスイングする。その中でスピンが自然とかかる」ということの意味が分かるかと思います。

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トップスピンをかける (スイング角度)
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トップスピンをかける (プロネーション) 2
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