飛ぶラケット・飛ばないラケット

ラケットの飛ぶ・飛ばないとは?

テニスラケットの話をする際、「このラケットは飛ぶ」「このラケットは飛ばない」という言い方をします。

飛ぶと言われるラケットはバボラのピュアドライブに代表される100インチ以上のラケットが多いので「100インチ以上 = 飛ぶラケット = 初心者用」のような認識も多いです。

ここではラケットの飛ぶ・飛ばないということについて考えて見ます。

ボールを飛ばすのはラケットの持つ運動エネルギー

ボールを飛ばすのは、スイングによってラケットが得る運動エネルギーです。

ラケットの運動エネルギーは接触によりボールに伝わり、ボールに伝わった運動エネルギーはボールスピードと回転量に反比例的に分配されます。

ボールを手に持って直接投げるのとは違い、ラケットとボールは固定されていないので、ラケットからボールに運動エネルギーが伝わる際にそれなりの量の “ロス” が生じます。

ボールを投げる 

ロスが生まれる要素は様々で、分かりやすい部分から言うと「正しく中央に当たらない」「打出し角度・方向とラケット面の角度が著しくズレているためカスレた当たりになる」などですが、ラケットの構造によっても生まれます。

それはボールが当たった際のラケットの「しなり」「歪み」「ぶれ」などです。

ラケットのフレーム厚や構造とボールの飛びとの関係性

よく、フレームが薄いラケットはボールは飛ばない、フレームが厚いのラケットはボールが飛ぶと言われます。

pro staff 90  PURE DRIVE TEAM

ガットばボールと接触した際、ラケットのフレームは素材や作り、構造によってしなり、歪み、ブレが生まれ、それらはラケットからボールに伝わる運動エネルギーの大きさに対して “ロス” を生みます。

 “ラケットの代わりに金属バットでボールを打てば桁違いに飛んでいく” ことは誰もが想像できるでしょう。金属バットは硬くテニスボールが当たったも全く変形しないので運動エネルギーの伝達にロスが小さくなるからです。

金属バットはラケットの2倍以上の重さですが、人が振る速度はラケットと大差ないでしょう。運動エネルギーの大きさは “1/2 x 物体の重量 x 物体の速度^2 (2乗)”です。金属バットが特別何か飛ばす仕組みがあって飛ぶ訳ではないのはわかると思います。

ラケットの飛ぶ・飛ばないという言い方は厳密には正しくない

ラケットに対して「飛ぶ、飛ばない」という言い方をしますが、正確に言うならば

「ラケットからボールに伝わる運動エネルギーにはロスがある。フレームが厚いラケットはボールが当たった際に変形しにくい分、伝わる運動エネルギーに対して100%の飛びに近い。反対にフレーム厚が薄くなるほどフレームがしなり、歪み、ブレることでボールを飛ばす力を大きくロスしている」

といういうことです。

飛ぶ・飛ばないというと、厚いフレームが何かのバネのような仕掛けでボールをより飛ばしている印象を持ってしまいますが「ボールに反映される力に対するロスの大きさで100%に近いか、ロスが大きいか」と言った方が実態に合うと思います。

飛ぶというプラス要素ではなく、ロスが大きい少ないというマイナス要素ということです。

ラケットフェイスが大きいラケットは飛ぶという認識

ここで再びラケットフェイス(ラケット面)が大きい方がボールが飛ぶという一般的な認識に話を戻します。

市販のラケットは、95平方インチから110平方インチ超の製品までありますが、各メーカーの製品ラインナップを見ると、ほぼ例外なく、95平方インチ以下のラケットのフレーム厚は20mm未満程度と薄く、100平方インチを超えると急に25mmを超えるような厚みのラケットばかりになっています。

つまり、

100インチ以上のラケットが「飛ぶ」と言われるのは、フレームが厚く変形しづらいのでラケットからボールに伝わる運動エネルギーにロスが小さい。

95インチ以下のラケットが「飛ばない」のは、フレームが薄く、しなる、歪む、たわむことでラケットからボールに伝わる運動エネルギーにロスが大きい。

ということです。

各メーカーのラインナップ戦略が一辺倒なので「飛ぶラケット・飛ばないラケットという一般認識」が広まっているわけですが、仮にフレーム厚が20mmを切るような薄さであれば100平方インチ以上のフェイスサイズのラケットであってもボールは“飛ばない”ということが起きます。

実際、プリンスの著名な製品である「グラファイト」はフェイスサイズが100平方インチでもフレーム厚が20mmを切っている(19.5-19.5-19.5mm)ラケットです。打ってみるとフレームが「しなる」感じがあり、そのフェイスサイズの大きさと関係なくボールはあまり飛びません。

prince graphite

ラケットのフレーム厚と構造によって生じるボールに伝わる運動エネルギーの”ロスの大きさ”が「飛ぶ・飛ばない」の正体でラケット面の大きさとは関連しない

ラケットにおけるボールの飛びに関しては

「ラケットのフェイスサイズは大まかなラケットの特性を示す目安でしかなく、95平方インチより100平方インチの方が楽だとか100平方インチならどれも簡単とは言えない。同じ100平方インチのラケットでもラケットによりフレーム厚や構造、素材が違い、より正確にラケットの特性を理解したければ、それぞれのラケットのスペックや特性を見て判断する必要がある」

と言えます。

仮に、98平方インチ程度のラケットに多い23mm前後のフレーム厚で作れば、90平方インチも110平方インチもボールを打って飛んでいく感覚(飛び)は大きくは違わないと想像します。

メーカーが95平方インチ未満は薄いフレーム、100平方インチを超えると厚いフレームを採用するのは、ボールの飛びやすさがフレーム厚やフレーム構造で概ね決まってしまうので限られた製品ラインナップの中で製品毎の特性を示すにはそういた偏った仕様の設定でユーザーに“ラケット毎の違い”を感じさせるしかないからです。

同じシリーズのラケットの中でも95インチと100インチが同じフレーム形状でフレーム厚ということはまずありえないですね。違いが殆どないからです。一方のフレーム厚を変更したり、重量を軽くしたり、ストリングパターンを変えたりといったことをするのが通例だと思います。

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