ガットを張り替える理由

テニスは始めるより続けるのにお金がかかる

テニスを続けていると、始める際に必要な費用よりも続けるための費用の方が圧倒的にかかるのが分かります。

新品のラケットが3万円弱、シューズが1万円弱、ウェアも全身で1万円とか。テニスを始める方にとってラケットの3万円弱は高すぎると思うでしょうが、テニスを続けていくとウェアは3か月~半年位で風合いや色が変わってくるし、シューズも週1でまじめにやれば1年位でソールが削れてきます。スクールに通ったりコートを取ったりボールを買ったりするのもお金がかかります。でも、直接的に一番お金がかかるのがストリング(ガット)の張り替えです。

ガットは代金と工賃で1回3,000~5,000円位かかります。年に4回張り替えるなら1万2000円~2万円位はかかる計算です。ラケットは5年くらい平気で使えるので、購入後2年経過した頃には張り替え費用の方が上回ってしまいます。

このため下手に中古ラケットを探し回るよりもテニスに対するモチベーションを保つためにも自分が気に入ったラケットを使うことは大事ですし、考えるべきは継続して必要となる費用を抑えようとすることの方です。

ガットは3か月に1度張り替える?

テニススクールやテニスショップでは「ガットは3か月に1回は張り替えよう」と言われます。人によっては打っている間にガットが切れてしまったり、ガットの種類によってはテンション(50ポンドとか張ってもらう強さ)の維持が難しい種類もあったりするので、もっと短い期間で張り替える場合もあります。でも、使う頻度を問わず、ガットが切れている訳でもないのに定期的に張り替える意味は何でしょうか?

一般にガットを張り替える理由としては「ガットは張った瞬間から伸びていく」「伸びてしまったガットは性能が悪くなる」「伸びてしまったガットは性能低下により肘にもよくない」と言った話を聞きます。

ただ、定期的に張り替えるよう求める反面「実際にラケットに張ったガットにどのような変化が生じているか?」が説明されるケースはないはずです。

誤解を恐れずに言えば、私はこの点に「メーカーなり張り替えを行う店舗なりの営業的な意図が含まれている」と感じるのです。

もちろん、張り替えが不要ということはありえません。ただ、ガットの種類や製品毎の耐久値や特定の強さで張った場合の伸び具合等をデータとして示すべきだろうし、それをしないのは様々理由があるのだろうということです。

ラケットに張ったガットはどうなっていくのだろうか?

ここからは私の単なる想像です。ご理解ください。

ガットの素材は、ナチュラルガットを除けばポリエステルやナイロン等の化学素材で、ガット張り機にラケットをセットし、指定されたテンションでガットを引っ張りつつ、緩まないように途中ガットを工具で部分的に留めつつ張っていきます。

まず、考えるべきは『ラケットに張ったままの状態のガットがどうなるか』です。

昔使っていたラケットが自宅に残っていたり、中古のラケットならガットが張ったまま売られていたりということは多いです。それらを見るとガットを手で引っ張ると浮いてしまう(隙間ができる)ほど緩んでいるということはありません。また、ゴム素材のように張った長さ以上に伸びて垂れ下がってしまうということも起こりません。

時間が経過してもガットが浮いてしまうといったことは起こらない

これらが示すのは、どんなガットも“ラケットに張った状態で伸びていく最大値がある”といことです。

ラケットのストリングホールに “ただガットを通した状態 (テンションをかけていない状態)”を基準とするならテンションをかけて張られたガットはこの状態に近づく形で“伸びて”いきます。

張った当初はテンションも高く伸びる割合は大きい。ただ、一定以上伸びてテンションが落ちてくれば伸び率は低下、以降は横ばいになってくるでしょう。ガットは伸びることで見かけ上テンションが弱まりますが、”たるんで”しまうほど伸びることもないので、例えばですが“50ポンドから45ポンドまでは1週間で落ちてしまうけど、45ポンド以下は鈍化、40ポンド以下には下がらない” といった事が起きているのは想像がつきます。

テニス ガットのテンションは当初急激に落ちその後は緩やかに推移する?

強すぎるテンションで張ってしまうと張った時点で物理的強度が落るかもしれませんが、伸び率が落ち着いてくるテンションの値は種類にかかわらずどのガットも比較的近いのではないか? また、張った状態でも言われるような「性能の劣化」や「身体に影響が与えるような不具合」が起きることは考えにくいとも思います。

ラケットには適正テンションがありますが30ポンド代など緩く張っている人も居ます。仮に40ポンド代でガットの伸びが落ち着いてしまうのであれば30ポンド代で張ればそれ以上伸びる心配をしなくていいということもあるのかもしれません。

メーカーは耐久性や経年劣化について膨大にテストしているはず

メーカーはガットを新規開発する際、膨大な数のテストをしているはずです。

ポリガットは耐久性がないといっても使用1時間で “伸びきってしまう” ような耐久性では市販できません。また、ガットには張ってから何ヵ月使えますといった参考データもなく、現に何年も張りっぱなしのラケットを日々使っている人も居ます。素材の改良も含めて最近のガットが1年やそこらで経年劣化が起きるなら店頭に並ぶパッケージ状態のガットも多少なりとも劣化が起きていることになります。

これらのことからメーカーは使用状態にかかわらず、新品の状態、また張られて伸びていってもある程度の幅で問題なく使えることを(表記や公言しない部分で)担保しておかなく必要があり、そのためにテストもしていると想像します。1年間張りっぱなしのガットでボールを打ち、怪我をする事例があちこちで起きてしまっては困りますからね。

プロ選手は試合中に何度もラケットを変えている

プロ選手は試合に何本もガットを張り替えた状態のラケットを持ち込み、ニューボールになるタイミング等でラケットをたびたび交換します。

これを「ガットが伸びる・緩むことで性能が落ちてしまうからだ」と言われることは多く、それが「ガットは伸び、緩むから、性能維持を考えるなら頻繁に張り替えていくべきだ」という根拠になっているように感じます。

でも、プロ選手のように耐久性が厳しい状態でボールを打ち合う状況にある(※)のでなければ、前述の通り、張った状態にあるガットの性能がものすごい勢いで低下する、或いは張った状態のガットは明確な経年劣化を起こすという説明は現実味がないと思います。

※頻繁にガットを切ってしまうような方は自身そういう状況にあると考えるかもしれませんが道具よりもむしろ打ち方に問題があるのかもしれません。

我々はラケットやガットの良し悪しを「打感」で判断している

我々がテニスをする際、ラケットでボールを打った際に持つ感想は “ほぼすべて「打感」に基づくもの”です。ほぼ性能差がないラケット似たようなでも、私たちは “打感を根拠にAはいいけどBはよくないといった評価をしがち” です。

打感を評価に入れるのがおかしい訳ではないですが、ラケットの性能とは関係ない部分でラケットの良し悪しが決まるのは変です。これには周りの感想を事前情報として見聞きしていることも影響します。

これはガットにも言え、張り替えた直後の打感はいいけど1週間後に打ってみたらテンションが落ちたせいか打感が悪くなったといった言い方をしたりします。

この「打感」に関する印象は我々よりもプロ選手の方がはるかに大事にするはずです。

プロ選手は打感の変化を嫌って張りたてのラケットに交換するのだと思う

プロの試合の中ではガットも短時間で伸びや緩みが生じ打感も変わるでしょう。つまり、ガットの性能が落ちてしまうからではなく、張りたての打感を保つためにプロ選手達は頻繁にラケットを交換しているのだと想像してます。鈴木孝男選手のように敢えて練習で使いテンションが落ちてきた状態のラケットを試合でもそのまま使い続けると言われる選手も居ます。

プロ選手にとってラケットやガットは商売道具、道具を理由に負けてしまってはどうしようもありません。それ故に同じ打感のラケットを使い続けるべく沢山のラケットをコートに持ち込むのでしょう。(錦織選手も試合前に何本かのラケットの中からガットを叩く音を参考に1本を選んだりされますね。)

ガットが伸びると性能が落ちるから短期間で張り替えるという話

プロ選手が試合中に頻繁にラケットを交換するのを見てて「プロもやっているし、ガットが伸びると性能が落ちてしまうから」と切れてもいないガットを頻繁に張り替えている方は少し感覚がズレている気がします。

逆に、お金はかかりますが「張りたての打感で常に使い続けたい」という理由で毎日でも張り替える人がいるなら完全に同意できる気がします。でも、毎日張り替えできるプロ選手ではない私たちにとっては張りたての打感を常に使い続けるのは大変難しいことですね。

ガットは張り替え後、大きく伸びその後伸びは鈍化、停滞する。そのテンションを基準にすべきではないか?

ガットが切れてたびたび張り替える人も含めて、張りたてのガットを使いたいのは分かりますが、むしろ一定時間(数日?)置いて、当初の大きな伸び率が収まった状態のラケットを使う方が「打感」は安定しているのではないかと思います。物理的にガットが損傷する使い方でなければ3か月張っていても性能劣化や体に不具合を与えるような影響(※)が出るとも思えません。

※ラケットやガットが自分の体の仕組みに合わないというのはあると思います。でも、道具の性能に問題がなくても「打感」が好みでないことでその使い方に無理が出る。また、そもそもスイングする体の使い方から問題があって体に無理が出て結果怪我に繋がるケースの方が圧倒的に多いと思うのです。肘に悪いからとナチュラルガットを使うよりスイングする際の体の使い方を見直す方がよほど効果はあると思います。

逆に、打感の違いすら感じることができない状態、「張りたては音が違う。ボールが飛ぶ気がする。」といった程度の認識であれば、尚更、伸びると性能が落ちるうんぬん言っているのに違和感を感じるのです。

テニスをやっているのに道具に無頓着で道具を大事にしない、ガットの種類もテンションもスクールのコーチにお任せで前回いつ張ったか分からないような方は、テニスを続けるモチベーションのためにも道具に関心を持った方がいいとは思いますが、盲目的に3か月に1度は張り替えろと強調しているのは張ってほしい側 (売り上げが上がる)ばかりだと思うのです。

ガットが伸びることによる性能低下に問題がないなら気にすべきは自分達が感じる「打感」であり、テンションが落ち着いた状態のラケットなら、自分で道具に関心を持ちながら張り替え時期は自分で決めていいと思うのです。

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