サーブでジャンプする意味3

回転をかけてサーブを打つということ

サーブを打つ際、全て回転をかけて打つ必要があります。理由は既に書いたように身長2mを超える人でも無回転のサーブを入れるのはほぼ不可能だからです。

多くの人が「回転をかけていない」という意味で言う “フラットサーブ” は、打点からサービスボックスの地面を結んだ直線よりも高く打ち出したボールが、自分では操作しようのない “空気抵抗” “重力” により “勝手に失速し偶然入っている” だけです。

サーブが入らなければゲームが成り立ちませんし2回失敗すれば失点です。2回に1回は入れないといけないサーブにおいて自分ではどうしようもない要素に依存するのは馬鹿らしいでしょう。

「1stサーブはフラットサーブを打ちます」「フラットサーブの確率を上げたい」と言っている人達はサーブに関するごく基本的な理屈を知らないままということです。サーブを教わる際にそういった説明を受けないため不自然さに気づきません。

サーブに回転をかけると知っている人でも、“回転のないフラットサーブが基本で特別な技術を使い回転をかけるサーブはより高度な応用だと教わりそう思っている” 或いは “回転がかけられない(技術がない、打ち方が完成していない) からフラットサーブを打っている” という人が殆どでしょう。

ラケットでボールを正確に捉える

まず、ボールの一方の端に偏って力がかかれば回転が発生します。サーブにおいてボールに回転をかけるためには、まず、ボールに対して下側から上側にラケットを当てていく必要があります。

ボールの打ち出し角度に対し下から上方向にラケットを振っていく

「それはサーブを打つ際、下から上にラケットを “振り上げていく” ということだろ?」と思うかもしれませんが、ボールに対して極端な角度でラケット振り上げてもラケットとの接触面の角度が浅くなり、正確にボールを捉えることは難しいです。

薄い当たりでラケットを擦り上げて回転をかける

ラケット面はボールを打ち出す角度の真後ろから90度の角度で当たるのが最もボールを安定して捉えられると言われています。その角度はズレても5~6度の範囲に納めないと当たりが安定しなくなります。

ボールの打ち出し角度に対しその真後ろから90度の面でラケットを当てる

この原則はショットの種類を問わないのでサーブにおいても打ち出し角度に対するラケット面の角度が正しくなければ正確にボールを捉えることができません。

サーブを打ち出す角度は下向き? 上向き?

また、サーブを打つ際の打点の打ち出し角度は「回転をかけなければ打点からサービスボックスに向けて打ち下ろす、回転をかけるなら真上にラケットを振り上げる」というイメージがあり、実際にどういった角度、方向に向けてボールを打ち出すべきかという点については皆認識が曖昧なままです。

フォアハンドの例ですが、ベースライン中央付近の地面から80cmの高さで打つ際、ネット中央の一番低い部分の2倍の高さ(約1.8m)を通す際の打ち出し角度は “約5度” です。

フォアハンドストロークでベースラインからネットの2倍の高さを通す

打点の位置が地上80cmなため0.914×2に当たる高さは +102.8cm

フォアハンドストロークでネットの2倍の高さを通すための打ち出し角度は+5度ほど

サーブを打つ際の打点の高さは、身長170cmの人がジャンプをせず自然に腕を伸ばした状態でも大体251cm程ありますから、そこからサービスボックスに直線的に打ち下ろすわけではなくても、ほぼ “水平 + α” の角度で打ち出せれば十分なはずです。当然ボールスピードが遅い場合はネットを越せる距離を出すために打ち出し角度を上げる必要がありますが、それでも40度、50度といった極端な打ち出し角度は不要なはずです。後述する回転をかけるためにラケットを上方向に振るスイング方向とこの実際の打ち出し角度を混同してしまいがちですが、まずしっかり理解することが必要です。

フェデラー選手のサーブ練習

ボールの打ち出し方向は水平+αといった角度。ラケットは打ち出し方向に対してボールに力が伝えるように振っています。

サーブのスイングで手に引かれるラケットの動き

次に、脱力状態で打つフォアハンド同様、サーブにおいてもラケットはグリップ側から手に引かれ、ラケットヘッド側はスイング方向にまっすぐその逆側から追従する形になります。

サーブ 脱力 手に引かれるラケットの動き

いわゆる「ラケットダウン」の状態ですが、腕に力を込めない(脱力状態)でラケットを引けばラケットヘッド側は慣性の法則によりその場に留まろとするので、グリップ側から引かれることでヘッド側は自然とスイング方向と逆側(地面方向)を向きます。ラケットをグリップ側から引き上げる際、前腕は回外(スピネーション)も自然と起こっています。

サーブのスイング開始時における前腕の回外(スピネーション)

サーブの指導で言われる“ラケットダウンという形(状態)を作る” 必要はないです。これは脱力状態で打つフォアハンドにおけるラケットの動きと同じです。“ラケットダウン” とはラケットが動いている間の一瞬の状態を言っているだけなのです。

スイングにより上方向に引き上げられたラケットは、遠心力によりグリップ側よりヘッド側の方が外側に膨らみグリップ側よりも速度が増したヘッド側 (同じ角度を動く際、中心より遠い物体の方が速度は速くなる) はグリップ側を位置的に追い越しますが、腕の長さ以上には前には進めないので “腕の長さ + ラケットの長さ” を最長に以降は腕に引かれる形でラケットヘッド側は下に下りてきます。この一連の動きが “単なる円ではなく 陸上競技のトラックのような一部が伸びた曲線(オーバル)” を描きます。サーブのスイング時ラケットは直線と曲線がある陸上競技場のような形(オーバル型)を描く

フォアハンド同様、体を中心とした単純な回転運動で打ってしまうと想定するボールの打ち出し角度を作れるボールとの接点が1箇所しかなくなってしまうので、下から上にラケットを持ち上げて以降はスイングする本来の目的である “ボールを飛ばすために打ち出し方向に(前に向かって)ラケットを振る”動作が必要となります。

ラケットは上に向かって振り、インパクト以降は下りてくるので打ち出し角度に向かって触れる時間はフォアハンドよりも短いのですが、“打ち出し角度とそれに向かってラケット振るという意識” が安定したサーブには必要です。回転をかけることばかり考えていると自分がどこに向かって打ち出しているか分からなくなってしまいます。

スイングする目的はボールを飛ばすため、回転をかけるために打ち出し角度と大きく乖離したスイングに意味があるのか?

フォアハンドのスピン同様、前に向かって振るスイングがボールを飛ばし、上に向かって振るスイングがボールに回転をかけます。ボールを飛ばすのが目的なので前に振るという点を中心に考えます。まずは “水平 + α “の角度で、その打ち出し方向に向かって真後ろからラケット面を90度の角度で当てるということから始めることで、その上でボールへの当て方を工夫し、ボールと接触する際に下から上向きに力を加えることでボールに回転をかけるようにすればいいと思います。最初から回転、回転と考えてもサーブのスイングに必要な体の使い方を理解する妨げになります。

サーブにおける体の使い方を確認するにはまず回転をかけずに打ってみる

冒頭に、空気抵抗と重力で勝手に落下するサーブはダメだと書きましたが、ボールの正しいインパクトとラケットを振る体の使い方はまず無回転のサーブで体感するのがわかりやすいです。フォアハンドのトップスピンと同じで、体の使い方を学ばずフラットで打ったらどう飛ぶかを理解することなく、回転をかける話に終始してしまうので、安定して打つことができなくなります。これはフラットサーブの指導ではありません。まず、回転をかけないサーブを打つことでサーブに必要な基本となる体の使い方を理解します。加えてボールに働く物理現象等の理屈を理解、最終的にスイングするだけで勝手に回転がかかる(回転をかけると意識する必要がない)という打ち方を完成させることに繋がります。

繰り返しますが、ボールの打ち出し角度は “水平 + α “ が基本となります。ボールに回転をかけたいからと言って、その打ち出し角度をはるかに超える角度でラケットを振り上げても、ラケットからボールに伝わる運動エネルギーにロスが生じ、回転がかかってもボールが前に飛ばない、打つ度に飛び方が違う、ネットまで届かないといった結果に繋がります。

1.体の使い方を理解しない。
2.意図的に回転をかけようとする。

これではいつまで経っても安定してサーブを打てるようにはなりません。サーブに悩んでいる人の多くは年々も改善されずに居るはずです。

サーブでジャンプする意味

サーブでジャンプする意味という話に戻すと、正しく体を使ってボールを打つということが身についた段階で、ボールに働く物理現象(回転)とそれを起こす理屈に基づき、ボールの当て方を工夫することで自然と回転がかかるサーブが打てるようになりますが、回転をかけるためには上向きの力をボールに伝える必要がある。それはスイング自体でできるものですが、ヒザの曲げ伸ばしや体を使うことで上向きのスイングがやりやすくなる、その結果僅かにジャンプする方がやりやすければ構わないということです。

ただし、繰り返しになりますが、ヒザを深く曲げてジャンプするのは視線のブレを生み正確にボールを捉えるのを阻害します。サーブのスイング中もできるだけ頭の位置は動かない方がいいし、ジャンプ自体も必要なものではないという点はしっかりと理解する必要にあります。

フェデラー選手のサーブ練習

サーブ練習序盤に軽く打っているフェデラー選手ですがジャンプをしなくても問題なく打てています。

また、サーブとスマッシュは体の使い方が共通するのは分かると思います。サーブとスマッシュではボールを打ち出す角度が違ってきますが、ジャンプをせずにスマッシュを打つことは皆問題なくできると思います。

つまり、サーブについても固定概念(ステレオタイプ)にとらわれれず、ジャンプするという意味について考えることが必用です。

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